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  • 2019.06.27

2018年度 訪日研究フェロー最終研究発表会

  • -NF-JLEP Association事務局

NF-JLEP訪日研究フェローシップ初年度(2018年度)の受賞者、デウィ・クスリニさん(インドネシア教育大学)の最終研究発表会が、2019年4月19日に事務局にて開催されました。クスリニさんの11か月間の訪日研究の成果を学ぶとともに、訪日中のNF-JLEPフェロー達と事務局との貴重な交流の機会ともなりました。

 

発表会に参加したNF-JLEP Associationメンバー

 

クスリニさんの研究発表

クスリニさんによる発表の様子

クスリニさんは、2018年6月から2019年4月まで、大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科で西尾純二教授の指導の下、研究を行いました。

研究テーマは、「インドネシア語を母語とする日本語学習者の申し出表現の習得」です。「カバンを持ちましょうか」といった日本語の申し出表現がインドネシア母語話者にとって習得しにくく、また申し出表現は教科書でも研究でもあまり扱われていない点に着目し、研究に取り組みました。

訪日中は、過去に収集した調査データの整理・分析、文献調査、研究ゼミでの発表等を行いました。西尾教授の指導により、考え方が整理でき、研究が大きく前進したとのことです。日本語母語話者と日本語学習者が使用する申し出表現形式のバリエーションを把握・比較し、日本語学習者の申し出表現の習得における課題を明らかにし、それらを基に申し出表現の教材作成の下書きを完成させました。最終的には、インドネシア母語話者向けの日本語教材の開発と、教授法の改善に関するインドネシア日本語教育学会への提案を目指しています。2年後を目途にインドネシア全国で活用できる教科書を作りたい、と意気込みを語ってくれました。

 

「申し出表現」とビジネス日本語

発表会の質疑応答では、今後のクスリニさんの研究に役立つ、多くの意見がでました。例えば、申し出表現を出発点として、ビジネス日本語習得のための教科書制作を目指してみてはどうかというアドバイスです。一見すると、「申し出表現」は日本語の表現の一つにすぎませんが、非母語話者が日本語で仕事をするといった、多国籍・多文化の者同士が協働する社会で、効果的かつ正確なコミュニケーションを行うために不可欠な表現方法である、というダイナミックなとらえ方もできます。そのようなとらえ方により本研究への社会的な注目度が高まるという指摘もありました。クスリニさんが長年取り組んできた研究成果の位置づけに対する重要な意見がいただけたと同時に、本研究の意義を再確認できました。

特に、日本語教育専門家として発表会に参加いただいた、阿部新准教授(東京外国語大学大学院国際日本学研究院)は、クスリニさんの訪日初期の発表会にも参加し、継続してクスリニさんの研究に対して貴重なアドバイスを提供してくださいました。

 

訪日中のNF-JLEP フェローとの交流

発表会には、NF-JLEP訪日研究フェローシップの2019年度の受賞者で、今年4月に来日したモカヌ・マグダレナさん(ブカレスト大学博士課程)も参加しました。

マグダレナさんの研究テーマは明治時代の翻訳理論です。明治時代に異文化交流のストラテジーとして使われた翻訳が、日本の翻訳理論形成及びその後の文化、政治、日本の近代化にどのように影響したかを、翻訳ストラテジー・規範の特異性、他国からの影響に着目しながら明らかにしたいそうです。東京大学大学院での、2020年3月までの1年間の日本での研究成果をジャーナルへ投稿し、国際的な学会で発表することを目的に、精力的に取り組んでいます。

他には、日本在住のNF-JLEPフェロー、コンスエラ・ハラランビさん(ブカレスト大学フェロー)、シティ・ファリダさん(インドネシア教育大学フェロー)、ギョクハン・ダーデヴィルさん(チャナッカレ大学フェロー)と、新旧のフェローが本発表会に駆けつけてくれ、NF-JLEP の交流会としても盛り上がりました。

 


NF-JLEP Association笹川陽平会長とも面会しました
(左から)マグダレナさん、笹川会長、クスリニさん

 

2020年度訪日研究フェローシップ 応募締切 9月2日(月)

NF-JLEP訪日研究フェローシップは、海外で日本語教育を推進するフェローに、訪日研究の機会を提供し研究を深めてもらうことが目的ですが、同時に日本の最新の文化や言葉にふれ、現在の日本を知る機会にもなっています。クスリニさんは、インドネシア教育大学の日本語講師に復職した現在、吸収したばかりの「日本の今」を授業で活かし、学生の学習意欲と日本への興味を盛り上げています。

現在、2020年度のNF-JLEP訪日研究フェローシップの募集を行っています。NF-JLEPフェローのみなさんもこのフェローシップを活用して、クスリニさんのような経験をしてください。詳細は以下のページをご覧ください。

NF-JLEP訪日研究フェローシップ

大学院生対象
若手教員対象