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  • 2018.08.09

2018年度 訪日研究フェロー研究発表会

  • -NF-JLEP Association事務局

NF-JLEP Associationサポート・プログラムの初の受賞者、デウィ・クスリニ(インドネシア教育大学)さんとルーシー・フレーザー(オーストラリア クイーンズランド大学)さんが2018年7月11日に事務局を訪れ、訪日研究についてその意気込みを語ってくれました。この発表会には、阿部新准教授(東京外国語大学大学院国際日本学研究院)が出席され、研究へ学術的なコメントをいただき、とても有意義な会となりました。

 

(左から)阿部准教授、フレーザーさん、クスリニさん

 

 

「インドネシア語を母語とする日本語学習者の申し出表現の習得」
デウィ・クスリニ(インドネシア教育大学)

クスリニさん

クスリニさんは、「インドネシア語を母語とする日本語学習者の申し出表現の習得」に関する研究を行っています。本研究の目的は、日本語母語話者と日本語学習者が使用する申し出表現形式を比較し、日本語学習者の申し出表現の習得における課題を明らかにすることです。一般的に、インドネシア母語話者向けの教科書で扱われる申し出表現は、「疑問型」の「持ちましょうか」に限定されますが、日本語母語話者が実生活で申し出を行う場面では、「持ちます」といった「行為宣言型」の表現も、多用されています。

 

日本語教育において、依頼や授受に関する表現は初級から中、上級レベルまで幅広く扱われ、研究が盛んな一方で、申し出表現は教科書でも研究でもあまり扱われていません。クスリニさんは、申し出表現の習得は日本語での円滑なコミュニケーションを促進するための重要な学習項目のひとつであるとし、最終的には、インドネシア母語話者向けの日本語教材及び教授法の改善に関する提案を行うことを目指しています。

日本語母語話者にとっても非常に興味深く、自身の言語使用場面を考えさせられる研究テーマで、質疑応答の際は、「緊急性」や「話し手、聞き手の立場」の影響に関する議論で盛り上がりました。阿部准教授からは、社会言語学的な考察も大変意義深いが、日本語教育の研究としては、学習者が何を学ぶべきかを明らかにさせることが重要であるというコメントがあり、また調査方法に関するアドバイスをいただきました。

 

 

「日本(ヤマト)とアイヌの物語におけるフクロウ
―人間と動物の関係の再生成」
ルーシー・フレーザー(オーストラリア クイーンズランド大学)

フレーザーさん

フレーザーさんの研究は、「日本(ヤマト)とアイヌの物語におけるフクロウ―人間と動物の関係の再生成」という題目で、日本文化の考察を通じ、オーストラリアの日本語教育発展への貢献を目指すものです。研究の目的は、日本(ヤマト)とアイヌのフクロウを中心とする物語の歴史、再話の例、また再話の過程でどのような知識が語り継がれ、あるいは失われたかを明らかにし、そして再話がどのようにフクロウの保護に役立つかを考察することです。

クスリニさんとは全く異なる日本語教育へのアプローチをとった研究です。フレーザーさんの研究は、アニメやマンガなど、日本の現代ポップカルチャーへの興味をきっかけに日本語を学習するオーストラリアの学生が多い中、「再話」を取り上げることによって現代と伝統的な文化の繋がりを見直し、新たな切り口から、学生の日本語と日本文化への関心を高めることを目指しています。フクロウは世界中に生息し、オーストラリアにもフクロウに関する伝統的な物語があるため、比較研究が行いやすいことから、研究テーマとして適しているとのことです。また、少数民族としてのアイヌを扱うことで、文化の多面性への理解を深めるための日本文化、日本語学習へと展開することが期待できます。

阿部准教授からは、本研究をどのように日本語教育の発展につなげるのかという率直な問いが投げかけられましたが、フレーザーさんは、日本語教育でよく取り上げられる現代の社会課題を離れ、動物環境保護という観点から新たな研究分野を開拓し、より多くの学生と研究者を日本語教育、研究に取り込みたいという大きな夢を語ってくれました。

 

 

2019年度訪日研究フェローシップ 応募締切 9月28日(金)

二人のフェローの日本語教育へのアプローチは対照的で、出身国の日本語教育や研究のトレンドを表しており、教員、研究者としての課題や研究へのアプローチが異なることを感じました。インドネシアでは、全般的に古くなりつつある教科書の更新が喫緊の課題で、学習者の自然な日本語の習得が推進されているようです。一方オーストラリアでは、日本語学習者数を増やすことが大きな課題で、研究者、日本語教育者に求められることは、新しい教材・教授法を開発し、学習者の学習意欲を高めるコースを提供することです。

本サポート・プログラムは、訪日研究の機会を提供し研究を深めてもらうと共に、海外で日本語教育を推進するフェローに、日本の最新の文化や日本語にふれ、実際の日本を知ってもらうことを目的としています。二人とも大学で講師を務めており、時間は限られていますが、日本での研究、滞在を有意義なものにし、母国のNF-JLEP校での教育、研究活動に活かしてほしいと強く願っています。

引き続き2019年度も「NF-JLEP訪日研究フェローシップ」の募集を行っています。詳細は以下のページをご覧ください。応募締切は 2018年9月28日(金)日本時間正午です。

NF-JLEP訪日研究フェローシップ

大学院生対象
若手教員対象