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  • 2020.02.28

第一回日本訪問プログラム報告会

  • -NF-JLEP Association事務局

NF-JLEP Associationでは、初等中等教育機関で日本語を教えるNF-JLEPフェローに、短期間日本に滞在する機会を提供する日本訪問プログラムを、2019年度から開始しました。フェローに日本の実社会や文化に触れた経験を、帰国後の日本語の授業に役立ててもらうことを通じ、NF-JLEPに参加する大学(NF-JLEP校)における日本語教育の推進に貢献することを目指しています。

記念すべき第一回のプログラムでは、2020年1月11日~22日の12日間、5名の参加者が、東京の他、日本の伝統文化が残る石川県金沢市で、授業で活用できる教材作りに取り組み、日本文化体験や一泊二日の能登研修旅行に参加しました。とても忙しいプログラムでしたが、日本語教師の5名は、精力的に教材開発に取り組み、たくさんの“生教材”を手に入れました。ホストファミリーや、他の海外からの金沢研修参加者との、あたたかい交流も体験しました。本プログラムの最後に当研究所で行われた報告会で、それぞれの成果と、感想を発表してくれました。

イワナ・アタナシウ・バナー(ルーマニア)

イワナさんは、ブカレストで唯一、日本語教科のあるイオンクレンガ高校の日本語教師です。生徒たちは、ひらがなは比較的簡単に学習できますが、カタカナの学習に苦労しています。カタカナを克服するため、言葉歌留多(カルタ)を作成し、ゲームを通して楽しくカタカナを覚えるための情報を日本でたくさん集めました。今回の研修では、特にカタカナで書かれた看板の写真などを収集しました。看板には、ゴミの分別など、環境問題のトピックに広がるよい素材が見つかりました。カタカナには、外来語だけでなく、メッセージを強調するなど、いろいろな役割があることを教え、生徒が興味を深めて、学習が進むように工夫していきます。一緒に本プログラムに参加したインドネシア教育大学のルザさんから、授業で使えるインタラクティブゲームを教えてもらい、さっそくブカレストの高校で使ってみたいと、意気込んでいます。言葉の学習を通して、生徒たちの日本文化への興味を深めたいそうです。

ルザ・クォドゥリヤンティ(インドネシア)

高校教師であるルザさんは、ICT教育に関心があり、彼女自身の授業では積極的にITツールを取り入れています。日本で出会ったあらゆる情報、例えば、注意書き、看板、自動販売機の音声、銀行ATMの音声などを、効果的に教材化するべく、熱心に収集しました。インドネシアの学校では、アプリを使って、生徒がスマートフォン同士で共有できる動画教材ゲームを活用して、日本語授業を行っています。さっそく自動販売機の音声を活用したスマホゲームのデモを報告会で見せてくれました。彼女のITツール活用は、他の本プログラム参加者にも、多くの刺激を与えました。ルザさんは、今回貴重な体験ができたので、生徒にも日本に行く機会があれば嬉しいと感じています。彼女はこれからも、授業を通して、生徒の日本語学習意欲を高め、日本語・日本文化の理解を通して自分たちの文化やマナーについて考える機会を与え、生徒の世界観を変えるような教師になることを目指しています。

キャスリン・トミナガ(オーストラリア)

キャスリンさんは現在、小学校の複数のクラスで日本語を教えています。授業を通して、日本語の面白さに出会い、日本語への興味を継続させ、中学校でも、学び続けてほしいと願って、日々努力しています。小学校で日本語を好きになってもらうことがとても重要だと考えています。本プログラムでは、様々な貴重な体験ができました。予想外に興味深かったのは、金沢で、他の日本語教育プログラムでスイス、韓国、中国、ブラジルなどの国々から来日した人々と日本語で交流できたことでした。日本人とのコミュニケーションとはまた別の、特別な交流の機会でした。水引作りや、親子丼作りなどの文化体験も楽しかったですが、特に印象的だったのが、小学校訪問でした。予定していたICTの授業の前に音楽の授業も見学することができ、貴重な体験でした。ホームステイ先では、キャスリンさんは日本語が流暢であるため、ホストファミリーのお父さんは、初めてホームステイの訪問者と会話を楽しむことができたそうです。報告会では、楽しく小学生に日本語を教える教材ゲームを発表してくれました。

マルテンブディナ(インドネシア)

今回のプログラムは、マルテンさんにとって初体験づくしでした。初めての海外、初めての飛行機、初めての厳しい寒さなど、刺激的な体験の連続でした。インドネシアから日本への道中、飛行機で出会ったカップル、ホテルまでの道案内をしてくれた警察官など、多くの人に親切に助けられ、日本人の印象が変わったそうです。しもやけが足にできてしまいましたが、薬を飲んでがんばりました。ホストファミリーとも楽しく交流し、マルテンさんが作ったインドネシア料理をホストファミリーが味わう機会もありました。教材作りでは、日本での日々の生活の中で集めた素材を活用した、日本語の基礎的な言葉を覚えるパワーポイント教材を作成しました。唯一の心残りは、滞在中雪がふらず、初めての雪を体験できなかったことだそうです。

ジェシカ・ブレザテン(オーストラリア)

ジェシカさんは、勤務している小学校でたった一人の日本語教師であるため、普段は日本語を使う機会がなく、自分の日本語力が落ちてきていると心配していました。また、日本語教育の悩みなどを共有できる人が身近におらず、少し寂しく感じていましたが、このプログラムで4人の貴重な仲間と出会い、たくさんのアイディアの共有と、アドバイスをもらう、嬉しい機会となりました。教材としては、日本人とのコミュニケーションで重要な自己紹介の動画を作りました。様々な教材リソースも日本で入手することができました。今後は、干支(えと)を活用して動物の名前をおぼえる教材を作りたいそうです。これからも、オーストラリアの日本語教育に貢献する意気込みを話してくれました。

報告会を通して、5名の日本語教師のみなさんが、アプリなどのITツールの活用、ゲームの活用などで、生徒が楽しく日本語を勉強できるように日々努力していることがよくわかりました。与えられた教科書だけで教える先生はいないようです。日進月歩のIT技術や、変わり続ける日本人の生活・文化を取り入れる日本語教育は、日本語教師の終わりない努力の連続で支えられていることを実感しました。また、日本人は気づきにくいですが、日本は“生教材”であふれていることもよくわかりました。日本訪問プログラムが、少しでも先生方の授業の役に立つことを願っています。

NF-JLEP Association会長との面談。笹川会長からは映像を使った教材の効果についてお話がありました